2011年3月9日水曜日

ヘレス・フェスティバル12 マヌエラ・カラスコ

幕が開くと舞台中央の台の上で
椅子に座っているマヌエラ
みじろぎもしない彼女をみただけで観客は拍手をはじめた。
こんなバイラオーラはほかにいない。

フラメンコの女神

その圧倒的な存在感。
何もしなくても絵になる。
黒字に白の水玉の衣装でロマンセ風ブレリア。

すっと手をあげるだけで彼女がいる空間自体がフラメンコに染まる。
コンパスを、フラメンコを絶対的に支配する彼女の力。
有名な、
両手を宙に高くつきあげるポーズも
ほかの人がやったらお笑いものだろう。
マヌエラだけに許されたかたちだ。

続いて短い丈の上着に腰高ズボンという
伝統的衣装の4人のバイラオールたちによるカーニャ
最近はあまりみることがない伝統的な衣装は目の保養。
が踊り手たちの群舞は揃ってるとは言い難い。

机について歌い手たちのカンテソロ、
ファンダンゴ・デ・ウエルバが終わると
再びマヌエラ。
マノロ・サンルーカルが闘牛の世界を描いた名作「タウロマヒア」の
「プエルタ・デ・プリンシペ」のコーラスからはじまるアレグリアス。
闘牛士の行進用の刺繍の入ったマントをはずすと
闘牛の、ピンクと黄色のはなやかな衣装。
スター性がきわだつ。
前日、記者会見で
「私の舞台では私自身が舞台美術」
と言い切ったマヌエラだが、実際、彼女がいれば何もいらない。
夫ホアキン・アマドールのギターと
彼女の迫力に一歩もひけをとらないエンリケ・エストレメーニョの歌の中を
ほかの誰でもない、マヌエラならではのバイレをみせる。
ちょっとした仕草のムイ・フラメンカなこと!

バイラオールたちによるタンゴに引き続き
マヌエラの義妹スーシのカンテソロはなんとビダリータ。
繊細で叙情的なこの曲を情熱的に
マヌエル・デ・ルスの伴奏で歌い上げた。

そして最後は定番。
ソレア。
ソレアといえばマヌエラ。マヌエラといえばソレア。
下手にすっと立った彼女の美しさ。
立っているだけなのに鳥肌がたつようなすごみのある美しさ。
もう何十回もみているソレアなのに
観るたびに心がふるえる。
赤と黒の、ちょっと西部の酒場の女のような衣装についていた
昔風のコーラをとりさり踊るマヌエラの素晴らしさ。
そしてここでもエンリケが
津波のような、マヌエラのエネルギーをしっかり受け止め
堂々と渡り合う。
オレ・ロス・ドス!

あとできいたらエンリケはここ数日間の風邪をおしての出演
ファンダンゴが思うように歌えなかった、
と言っていたが、それでいてあのエネルギー。
脱帽である。


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